それは1個のボールから始まった
1998年6月,宮城県柴田町にある表蔵王GCでJCBクラシックが行われました。仙台近郊で開かれる数少ないゴルフトーナメントということで,私(当サイト管理人)は毎年楽しみにしています。予選2日目,私は行けませんでしたが,私の家内が見に行っていました。ギャラリー入場口から一番近い9番ホールのグリーン奥に陣取っていたら,ホールアウトした選手の一人が次のホールへの道ではなくギャラリーのいる方へやってきた!ちょうど彼女のすぐ横を通りそうになったので,ロープをひょいっと下げて通りやすくしてあげたところ,頭上からボールがぽとり。どうやらその選手が彼女にお礼としてくれたものらしい。しかし気がついた時には,その選手は次のホールに行ってしまい,顔も名前も確認できずじまいでした。
さて,これがそのボールです。ふつうプロの使用球といえば,オンネーム(名前やニックネームがプリントされている)もしくはイラスト入りなんてのがおきまりなのに,それは市販のタイトリストのボールに緑色のペンで"SUSHI"と書いてあった。しかし、その時はまさかスシなんていう名前の選手がいるはずはないし、"SOSHI"の"O"の字がちょっと欠けているんだろう、と思いました。そこで「そうし」という名前の選手を探そうと、会場でもらった組み合わせ表を見てみたら,「石垣聡志」という名前の選手がエントリーしている。「そうし」という名前に該当するのは,どうやらこの選手だけみたい。(追記:後から考えると勘違いながらもSOSHI=聡志と結びつけなかったら,この出会いはなかったかも知れません。)
なんとかお礼の気持ちを伝えたいと考えた家内が,表蔵王GCに電話で問い合わせたところ,石垣選手は無事予選を通過したとのこと。そこで最終日,二人でJCBクラシックにでかけました。組み合わせ表を見ると,石垣選手はかなり早いスタートで,もうすぐ9番ホールにさしかかりそう。そこでまた9番ホールのグリーン後方で待つことにしました。待つことしばらくして,石垣選手の組が9番グリーンに上がってきました。石垣選手は,濃茶か黒か,とにかく濃い色のポロシャツに,白っぽいチノパンといういでたち。背丈は普通でしたが,かなり肩幅がひろくがっちりした体格の選手。でもプレーぶりはとっても真剣でした。
残念ながら今日は通常のルートで次のホールに行ってしまったので,お礼を述べるチャンスもなく,今度は先回りして11番ホールで待つことにしました。インの11番パー4,グリーン奥で待っていたらまたまた石垣選手がやってきた。ホールアウトした石垣選手に,家内は今度こそ昨日のボールのお礼を言おうとしたのですが,なぜか緊張してしまい,とうとう機を逃がしてしまったのでした。JCBクラシック最終日の結果は,若手の丸山・田中が追い上げる中,ベテランの水巻選手が安定したゴルフで優勝を飾りました。石垣選手は52位タイの成績だったそうです。
インターネットに石垣選手が
JCBクラシックから1ヶ月も過ぎた7月20日「海の日」。いつものように自宅でネットサーフィンしていた私は,GolfWebというゴルフに関する情報を提供しているサイト(今はもうありません)を見ているうちに,「這い上がれ!イシガキ!」という記事にふと目が止まった。「え?イシガキ?もしや!」と思ってその記事を読んでみれば,まさしくそれは石垣聡志選手の記事なのでした。
「這い上がれ!イシガキ!第1回」より引用
石垣聡志、23歳。石垣は無名である。石垣はビンボーである。しかし、バスト100のガタイを含めて、石垣は間違いなく大物だ。野球部、茶道部、相撲部を経るという奇怪な経歴。だが、その底流には、いつもゴルフがあった。ほとんど独学でゴルフを習得。昨年2位でプロテストをパスし、最終予選会を20位で通過。今年、プロの世界にひょっこりと顔を覗かせたばかり。そしてあとは、這い上がる一方なのだ!ゴルフウェブではまだ原石の状態から徹底取材を敢行!発展途上プロゴルファーの喜怒哀楽を、初々しく生々しく完全レポートだ!
筆者は「前田群緑」氏となっていますが,文章は石垣選手本人の言葉として綴られています。しかも,GolfWebあてに送られたファンからのメールは,印刷されて(石垣選手はパソコンを持っていない)郵便で送られているらしい。JCBクラシックで,もらったボールのお礼ができなかった家内は,石垣選手への連絡手段が発見されたことで大喜び。さっそく,お礼の手紙をしたため,電子メールで送りました。
「這い上がれ!イシガキ!第4回」より引用
そういえば、読者からのメイルで、「soushi(そうし)」と書かれたボールを、僕からもらったとあったけど、それは「soushi」じゃなくて「sushi(スシ)」。油性のマジックがにじんで、よく読めなかったのだろうけど。「スシ」と書いたのには、大きな意味はないんだけど、例えば、外国人プレーヤーと回るときとかでも、「スシ」と書いておけば、一発でわかるというだけ。寿司が好物ということもある。もう一度言う。「sushi」と書いたのが、僕のボール。いつか、この寿司ボールがマグワイアの62号ホームランボールみたいに価値が出るといいんだけどね。
応援団結成
GolfWebの「這い上がれ!イシガキ!」は,内容があまりにも面白いので,プリントして家族に見せ,離れた家族にはファックスで送りました。とりわけゴルフ好きの家内の父(竹内廣)は,「ヘエー,プロでこれほど有名でない人も珍しい。しかし楽しい人だ。文章もわかりやすいし...。」と大受け・大喜びで,職場のゴルフ仲間たちにもプリントを見せて回ったとのこと。
そうこうするうちに「応援団を作ろう!」という話に発展してしまった。実は家内の父は,平成10年7月まで「仙台郵便貯金会館(メルパルク仙台)」の総支配人をしていました。メルパルク仙台は,新築オープンして1年目。地上11F地下2Fのすばらしい建物です。
「そうか,まずは泊まる心配と食べること(注)だな...。うちは185部屋もあるし,茶室もあり食べものは売るほどある。石垣さんがJCBクラシックに出場する間くらいお世話できるよ。」(注)プロゴルファーがトーナメントに参加するには交通費・宿泊費・食費などの経費がかかる。なにせ石垣選手は発展途上プロゴルファーなので,全部自己負担。しかも出場したトーナメントで予選を通過できなければ収入はゼロなので,赤字を出してしまうことになるのです。
早速,会館内のゴルフと応援大好き人間によびかけ,石垣聡志応援団がスタートしました。応援団メンバー紹介ページへこのメンバーで第1回打ち合わせ会をひらいたそうです。ご本人のことそっちのけですが,まあ愉快な人たちです。危険な人は1人もいません。この調子ですと,来年のJCBクラシックまで何回打ち合わせ会をやるものやら...。
第1回応援団コンペ打ち上げ会
その後,GolfWebを通じて石垣聡志応援団発足のお知らせを石垣選手に連絡していただいたところ,「這い上がれ!イシガキ!」連載第3回で取り上げていただき,石垣選手にも喜んでいただけた様子です。
「這い上がれ!イシガキ!第3回」より引用
さて、紙で自宅に送られてきたメイルによると、なんと仙台には僕のファンクラブが、はやくも結成されたそうな。さらに、泊まるところと飯は、問題ないらしい!来年はお邪魔させてもらうことにするかな。こんなファンクラブが全国各地にあったら、いいんだけどね。
しかし翌1999年のJCBクラシックには出場することができず,わたしたち応援団がはじめて石垣選手にお会いするのは,2000年のJCBクラシックまで待たなくてはなりませんでした。
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